オートメーション・メール(いわゆるステップメール)には、3つの種類があることを、「オートメーション(自動)配信のメールの戦略をたてよう。どんなとき、どういう風に使うとリストが育つか?」でお伝えしていました。
この記事では、3番目の種類の「条件つきに流れる自動化メール」について、条件付きメールを組み立てる方法についてお伝えします。
この記事をお読みいただくことで、
・なぜ「条件つきに流れるオートメーション・メール」が役立つのか
・複雑なフローチャートを作成するコツ
がわかります。
なお、この記事では、MailchimpのEssentialプラン以上でご利用できる自動配信機能(Automated Customer Journey)を利用することを前提にしています。条件名や、機能名は、Mailchimpに固有な名称も含まれています。
目次
セクション1 条件付のオートメーション・メールとは
Mailchimpのなかの、Cuctomer Journey(以下、カスタマージャーニー機能と呼ぶようにします)のなかで、「 If / Else 分岐」機能を活用し、分岐ポイントを作成すると、受信者を、特定のアクションをトリガーにした別々のシナリオメールにリンクさせることができます。
「 If / Else 分岐」機能は、この表示単語が示す通り、シンプルに「もしそうだったら/そうでなければ」という、ひとつの提示されたトリガー条件にたいして、yesかnoかですすみます。
受信者がこの分岐のあるオートメーション・メールのなかにいるとき、あらかじめ指定されたアクションを、起こしたか/起こしていないかによって、別の体験をしてゆきます。
もし受信者が、経路Aに進んだ場合、その経路Aに設定された一連のメールのみを受け取ってゆきます。
経路Bに進んだ場合も同じです。ひとりの受信者が経路AとBの両方のメールを受け取ることはありません。
条件付きのフロー作成のための2つの概念
分岐ポイントがあるオートメーションの流れを作成する前に、まず、 2 つの概念を共有してください。
・プロンプト
AIとの対話などの対話形式のシステムにおいて、ユーザが入力する指示や質問のことをプロンプトといいますね。ここも同じです。わたしたち送信者側の要求に対して、受信者を適切に振り分けるために、システムに対して具体的な指示をするのがプロンプトです。
オートメーション・メールにおいて、プロンプトは、「分岐のトリガー」ともいえます。
分岐ポイントをひとつ設定する毎に、プロンプトは 1 つ設定します。
・分岐パス
受信者の行動に基づいて、分岐ポイントで発生した後につづく、それぞれ別の道のことです。分岐点にプロンプトは1つですが、分岐パスは、2つ発生します。
たとえば、下記の図をご覧ください。
例
新製品の発売を告知するマーケティング メールで、 (プロンプト)を作成し、送信するとします。
次に、受信者の行動に基づいて 、2 つの分岐パスが作成されます。ひとつは、「購入」した受信者に渡す枝。もうひとつは、「購入しなかった」受信者に、割引コードを渡すフォローアップ メールを送信するパスです。
このように、1 つのプロンプトと、 2 つの分岐パスで、条件付に流れるオートメーション・メールがセットアップできます。
プロンプトと分岐パスをまずは制限しよう
条件付に流れるオートメーション・メールは、自由に設計できるもののため、いくらでも作れます。ただ、やみくもにつくってゆくと、分岐ポイントがあっという間にジャングルのように増え、フローが複雑になって、作成したあなたでさえ、ひとめで解読できなくなってしまうことになります。そのため、条件付に分岐させる場合は、事前にフローを計画することが大切になってきます。
まず、最初に、オートメーション・メールを作成する前に、「目的」を決めましたよね(参照記事)。
その目的からそれないように、まず、各オートメーション・メール内の分岐ポイント数と、それに続くアクションの総数を制限してみてください。
こうすることで、分岐ロジック毎にそれぞれに必要なメールを無駄に作成する手間が省けますし、ひとめで、ワークフロー全体をみわたすことができます。
セクション2 プロンプトと分岐パスの作成例
複数のプロンプトと、分岐パスを持つフローをこれから作成しようとする前に、まず、全体を視覚化するフローチャートを作成しておきましょう。
手書きでかまいません。
事前にフローチャートを作成することで、カスタマー ジャーニー機能内で作成する各段階を明確にできますし、分岐ポイントで受信者がどのように行動するか、それに対応した流れはどうするか、を考えるのに役立ちます。
事前にフローチャートを作成することにより、パーソナライズ化されたコンテンツが、適切なタイミングで受信者に届くようになります。
フローチャート作成例
単純なフローチャートでも、効果があります。
ここでは、過去、和田美香オンラインスクールで配信していた、リードマグネットの無料動画を視聴登録したあとの人に、フロントエンド商品購入、つづいてミドルエンド商品購入を勧める一連のオートメーションを元にした例をご紹介します。
メールの通数は21通と多かったのですが、簡素化し3通でご紹介します。
まず目的を確認しておきます。
このフローの目的は、「リードマグネットで登録した人を、オートメーション・メールの利用により、フロントエンド、そしてミドルエンド、そしてバックエンドの相談サービスまで案内する」ことでした。
下の図では、まず、プロンプトとして、ウェルカムメール1通目を送って、フロントエンド商品の購入をすすめています。
そのメールに対して、受信者がとった行動、つまり「購入した/購入しなかった」によって、分岐パスを設けます。
「購入した」受信者には、分岐パスとして、購入御礼と、関連するお勧めサービスの案内のメールを流し、このフローは終わります。
「購入しなかった」受信者には、分岐パスとして、次のウェルカムメールを流しつづけます。後続のウェルカムメールには、フロントエンドの割引クーポン案内や、フロントエンドの商品購入者の声などを、それぞれのメールに盛り込んでいます。
ウェルカムメールの各段階にまた分岐パスが設けられているので、そこで都度、受信者の行動によって、「購入する」と、「購入しなかった」に分けられつづけます。
もし「購入した」パスにそれぞれから入れば、「購入しなかった」フローから離脱し、「購入した」受信者へのメールが流れます。

この例は、ウェルカムメールのなかに、分岐を設けるひとつの可能性をご案内したにすぎません。
なので、あなたもまず、フローチャートを作成し、実装してみたあとに、「この条件付きオートメーション・メールでうまく機能している点な何か?その長所を伸ばすために、さらにできる改善点は何があるか?」と自分自身に問うてみてください。
このウェルカムメールのフローの場合、改善点を考えるとすると、「購入した」あと、フローが止まっていますが、ウェルカムメールの流れをさらに継続させると、どうなるか、このままでいいのか、というポイントが浮かび上がってくるでしょうか。
セクション3 フローチャートを改善する3つの実践ポイント
ここでは、いったん作成し運営した、条件つきで分岐して流れるオートメーション・メールを、さらにより良くするために、どんな改善ポイントを検討したらいいのか、3つのポイントを紹介します。
改善ポイント1 顧客の行動に再焦点をあてる
受信者の行動を細かく分析すると、仮説をたてやすくなります。
たとえば、あなたがペットショップの経営者だとします。
過去データから、次のような分析結果が得られるかもしれません。
- 受信者の中には、メール返信をしてこないセグメントがあり、そのセグメントは猫の飼い主です。
こういった情報に基づいて仮説をたてるとすれば、猫の情報をメールで配信していることを明確に示すと、メールにも反応してくれるだろう、ということになります。
- 件名には、「この猫は何をしたかクリックして見て」と書いてみる。
- あるいは、このセグメントとの相互コミュニケーションを高めるために、「自分の撮った猫の写真をソーシャル メディアに投稿するコンテストに参加してほしい」というイベントを企画し、そのイベントを報せるプロモーション メールを送信する。
これらの仮説を実行したら、うまくいくものもあれば、うまくいかないものもあるでしょう。
改善ポイント2 レポートを活用する
ダッシュボードの指標を調査しましょう。
受信者とのやり取りの流れのなかで、フローのなかのがどこかで受信者が離脱しているのではないかと、わかるとします。
Mailchimpだと、たとえば、cmanpainのanaliticsで、started,In progress, completedの段階の各人数がわかります。また、ジャーニー内での各メールの「sent, opens」も確認できるので、異常があったら、その箇所を特定できます。
離脱者がでたら、なぜ離脱したかの理由を解明するための確認作業を行い、受信者がフローを進んでくれるようにするにはどうすればよいか、仮説を立てます。
たとえば、フローの 3 番目のメールを 80% の読者が開かないことがわかったら、その 3 番目のメールを再考するべき、ということになります。
改善ポイント3 規模を縮小する
ある時点で、オートメーションメールの配信を、収束させる必要があります。
受信者が、たくさんのシークエンスから成るメールを送信しても反応しない場合、さらにメールの送信量を増やすと、デメリットの方が大きくなる可能性があります。
受信者が明らかに興味を失っているのにもかかわらず、開封しないメールを送り続けると、そのメールは迷惑メールに分類されてしまい、ひいては、ソフトバウンスで返ってきてしまって、リストから失ってしまう可能性も高くなってしまいます。
だから、オートメーション・メールの送信通数は、最初から膨大にしないこともおすすめです。手間が減るからと、すべてをオートメーションに入れてしまうという送信者もいらっしゃいますが、メリットとデメリットを、常に監視しつづけておいてください。
もしかすると、送信するメールの数を減らして、別のマーケティング活動、たとえば、ターゲットを絞ったソーシャル メディア広告など、あなたのターゲットにより合うチャネルを検討することもおすすめします。
セクション4 分岐のフロー構築を演習してみよう
分岐のある条件つきオートメーション・メール作成は、まずは慣れることです。
あなた独自のフローチャートを作成してみる前に、うまくできるかどうか心配なときは、ぜひ演習に取り組んでみてください。
そうしたら、どんなプロンプトがあるのか、どんな分岐パスにしたらいいのか、ということが体感いただけるとおもいます。
以下ご紹介する演習について、まずご自身で手書きでフローを書いてみてください。
演習で扱う企業の背景:
あなたは、ネットショップ限定で小豆や小豆菓子を販売する会社を経営しているとします。あなたは、年配の女性ほど小豆や和菓子買わず、和菓子にそれほどお金をかけない若い世代への販売を増やすことで、市場シェアを拡大したいと考えています。
もうすぐ決算を迎えるため、既存在庫の一部を処分するため、ブラックフライデーセールを自社で開催するとします。
その在庫は、実は、年齢の若い女性の食生活スタイルにアピールしやすいものです。
あなたはメール配信の自動化で、マーケティングを拡大したいと考えており、これは試してみるチャンスだと考えました。
そこで、あなたは、まず、この件について計画をたてることにしました。
追加の条件:
- オートメーション・メールで2 つの目標を実現したいと考えています。ひとつは。若い女性顧客に Web サイトを利用してもらうこと。もうひとつは、ブラックフライデーセールで、小豆商品の売上を増やすことです。
- あなたは、和菓子や小豆に興味のあるリストを獲得するのが難しいと考えており、リストから解除されることは一番避けたいと考え、解除率をKPIにいれています。
- すでに、カート放棄者に対する、リマインドメールは、自動化されています。この一連オートメーション・メールとリンクさせることができないかとも考えています。
- あなたは、これまでブラックフライデーセールを実施したことがないので、受信者がどう行動するか過去のデータがありません。
フローを描いてみよう:
さあ、課題です。
若い女性をターゲットにした、ブラックフライデーセールをサポートする、分岐のある条件つきオートメーション・メールのフローを作成してみましょう。
フローは、あなたが構築可能なレベルまでで描いてみてください。
ではまず、「プロンプト」から始めて、分岐パスを書き出してください。
セクション4の 演習の回答
まず、15分程度考えてラフでいいので書き上げてみてください。
フローチャートをいちどあなたが書き上げたら、下記リンクから、回答例をダウンロード請求してみてください。
あなたが、Mailchimpでカスタマージャーニー機能をつかって、オートメーション・メールを構築する前に、他社を事例としたフローチャートを作成を演習することで、あなた自身のフロー作成のヒントを得ていただければ嬉しいです。
この演習の正解フローは、ひとつではありません。回答例は、そのうちのひとつを参考までに示すにすぎません。
回答例をダウンロードしたら、以下の質問について、あなた自身が演習で作成したフローを眺めながら考えてみてください。
- ダウンロードした回答例とあなたの描いたフローチャートの間には、どんな類似点がありますか?
- また反対に、どんな違いがありますか?
- 描く前より、簡単だと思ったことは何ですか?
- 描く前より、難しかったことは何ですか?
- あなたの事業で使用するフローチャートでは、何を採り入れますか?
- あなたの事業で使用するフローチャートでは、あなたが得たいがものから何を変えたいですか?
- あなたの描いたフローチャートは、演習企業の代表者の懸念や希望が反映されていますか?
まとめ
ここでは、分岐のある条件付きオートメーション・メールを作成する方法を学びました。
これは、正解のないとりくみになります。
なので、初心者のあなたは、まず、メール配信の自動化はかなりシンプルなものにしておくことをお勧めします。
やればやるほど、分岐のポイントをフレキシブルに考えられるようになります。