SWOT分析をはじめるときは、いきなり分析作業にはいらず、先に、準備が必要です。
前の記事では、SWOT分析の目的を明確にすることを学びました。
この記事では、SWOT分析のために情報を収集するために不可欠なことは何か?をみていきましょう。
目次
どうしてデータ収集が必要か
SWOT分析を行うためには、目的を設定した後、必要不可欠なのが情報収集のステップです。
そもそも、なぜSWOT分析のための情報収集が重要かをお話ししておきましょう。
情報収集で行うことは、「強み、弱み、機会、脅威」を特定するために必要なデータ集めることである。
どうしてかというと、十分な情報がなければ、SWOT分析は不完全なものとなり、組織の現状を正確に反映していない可能性がでてしまうからです。
また、多くの情報を集めれば集めるほど、行うSWOT分析を、より正確で包括的なものにすることができます。
情報収集の段階を経ていないSWOT分析は、ピースが揃っていない段階で、パズルを作ろうとするようなものだと想像してみてください。
当然、ピースが全てそろっていないパズルは、うまく出来上がりませんよね。
だから、情報収集の段階を忘れず行ってください。
(手順1)集めるべきデータをまず特定する
では、SWOT分析のための情報として、収集すべきデータとは何でしょうか?
まず、どのような種類の情報が、SWOT分析に関連するか検討してみてください。
検討対象としては、財務報告書、顧客からのフィードバック、従業員サービスなどの内部データが含まれます、
そして、情報源が特定できるものを集めてください。
できるだけ1次情報にあたりましょう。
たとえば、顧客からのフィードバックとしてSNSでのテキストを集めて従業員サービスなどの内部データ収集を終わりにするのではなく、裏付けとなる業界レポートなどの外部情報源として、公式に発表された統計など、その情報発行元を特定するといった具合です。
市場調査やニュース記事なども情報収集対象にしましょう。
(手順2)データを収集する
どんな種類の情報を集めるのかを特定したら、データの収集を開始します。
この作業では、社内データを集めたり、業界レポートを見直したり、オンラインや他の情報源からリサーチを行ったりします。
データの借り物競争をやっているようなものとして考えてみてください。
隠れた宝石のように、おもいがけない大物データを見つけることができたら楽しいです。
(手順3)データを分析する
データを収集したら、それを分析します。
SWOT分析に関連する主要な傾向をつかむために、データを分析する必要があります。
たとえば、データを要約したり、チャートやグラフを作成したり、浮かび上がった重要なテーマや課題を特定したりすることが含まれます。
謎解きのように、手がかりをつなぎ合わせながら、SWOT分析のピースのつなぎ方を洞察してゆく手がかりをつかみます。
(手順4)データを整理する
データの分析が終わったら整理です。
表やグラフ、その他の視覚的資料を作成し、より簡単にデータを確認できるようにします。
部屋を掃除をして片付けをするようなものです。
すべてのものが定位置に収まれば、全体像が見やすくなります。
常にデータを最新の状態に保つ
SWOT分析のために収集する情報は、最新のものを使いましょう。
たとえば、あなたの業界の最新のトレンドや動向を反映している情報を収集しているかどうかを、確認してください。
冷蔵庫に、賞味期限のきれていないおかずをストックするようなものです。
データが新鮮であればあるほど、SWOT分析も現状を反映したよいものとなります。
集めるデータはどんなもの?
SWOT分析のための情報収集として、あなたのチームはどのようなデータを集めるべきでしょうか?
まず、組織の内部要因に関するデータを集めましょう。
財務分析、顧客分析、従業員分析。
そして次に、外部要因。
たとえば、ステークホルダー分析、環境分析、ベンチマーキング。
一つずつ見てみましょう。
内部要因
内部環境として収集するデータや情報は、組織の強みと弱みに焦点を当ててみてください。
ここには、会社の財務実績、資源、能力、文化、評判に関するデータが含まれます。
データは、財務諸表、従業員調査、顧客からのフィードバック、その他の社内データソースを通じて収集することができます。
売上に対する人件費率とか、経費率といった、財務分析情報も有用です。
外部要因
外部要因として収集されるデータや情報は、組織にとっての機会と脅威に焦点を当ててみてください。
ここには、市場、トレンド、競争、経済状況、規制環境、技術的な脅威などに関するデータが含まれます。
データは、市場調査、競合分析、業界レポート、その他の外部データソースを通じて収集することができます。
ステークホルダー分析
ステークホルダーとは、組織のさまざまな利害関係者のことです。
その利害関係者を特定し、関係者のデータを収集します。
顧客、仕入れ先(サプライヤー)、従業員、株主、規制管轄の役所などの、ニーズ、期待、組織への影響力のレベルを理解することができます。
環境分析
組織を取り巻く、外部環境を理解する情報を集めます。
理解したいのは、経済情勢、技術の進歩について、法的規制など、組織単体ではどうにもできない、外部要因です。。
これは、組織にとっての潜在的な機会と、未来に起こりうる脅威を特定するのに役立ちます。
ゲームが、追い風に乗れるのか、向かい風に向かうのか、判断できます。
ベンチマーキングでは、同業他社のパフォーマンスに関するデータを収集します。
また、業界のベストプラクティスを理解し、自社の改善ができる領域を特定することにも使えます。
たとえば、競合の広告出稿の傾向や、広告費予算規模、広告のポジショニングなども、情報収集対象にあることもあります。
財務分析
自社組織の、収益、費用、利益、負債などの財務データを収集し、財務状況を把握します。
顧客分析
顧客の属性、ニーズ、嗜好、顧客の声に関するデータを収集します。
これにより、顧客のニーズや嗜好を理解する事に役立ちます。
ここにインターネット上であつめるものだけでなく、全国新聞、地元新聞で取り上げられたニュースや、小さなタウン誌で掲載された顧客の声なども、わすれず拾いましょう。
従業員分析
従業員の満足度、従業員の組織への貢献度、意欲度、離職率に関するデータを収集します。
組織の内部文化や職場環境も、ここに加わります。
チームで集める
1人で集めるよりも、チームで集めたほうが、より多様なピースを短時間で集めることができます。
集めるべきデータの詳細を指示して集めてもらうより、「外部環境」「内部環境」を集めるための「目的」をまず共有してから、どんな情報があれば、目的を達成するための情報になりうるのかを考えて、集めてもらうほうが、いい場合も多いです。
情報収集の担当をどう分けるか
財務会計が得意な人に、財務情報収集を担当してもらい、財務分析情報をだしてもらうと仕事は早くすすむでしょう。
マーケティングが得意な人に、競合他社の広告出稿状況や、トレンド情報を収集してもらうと仕事が早くすすむとおもいます。
このように、最低、4人程度に、「財務担当」「マーケティング担当」「組織内情報担当」「法的規制や環境担当」と集めてもらう情報分野の担当を分けると、情報収集の効率はよくなります。
事例紹介
ホテルで、データを集めた逸話をご紹介します。
まず、集めるデータの計画から始めました。
ホテルの財務情報。たとえば、収益報告、稼働率、経費、負債を集め、ホテルの財務状況を明確に把握できるもの。
現在のアメニティやサービスの質を知る必要もあります。そのため、客室、レストラン、会議室、施設など、ホテルが提供するすべてのサービスの詳細な目録。
また、顧客からのフィードバックや評価。
ホテル、アメニティ、サービスについては、その地域の競合他社が提供しているものと比較するもの。
また、現在のアメニティやサービスに関するスタッフのレベルやトレーニング、設備更新や改装に関する情報。
顧客の属性、ニーズ、嗜好、フィードバックに関するデータ収集。
このときは、5日以内に集めることにしました。
上記計画にそって、実際に次のような情報を集めました。
収益報告書、稼働率、経費など、全体としての、ホテルの財務状況がわかる財務分析情報。
自社のホテル、アメニティ、サービスの詳細目録と、その地域の競合他社が提供するものと比較した情報。
また、競合他社の稼働率に関するデータも収集。
スタッフのレベル、現在のアメニティやサービスに関するトレーニングの実施状況、 最近の設備更新や改修に関する情報も収集。
さらに、顧客の属性、ニーズ、嗜好に関するデータを集めました。
市場動向や競合についても調べました。
競合ホテルの稼働率や客室料金など、その地域のホテルの現在の市場状況についても、情報を収集。
競合他社がターゲットとしている顧客のタイプに関する情報。
その地域で、今後計画されている新しいホテルや開発に関する情報。
ホテル業界に影響を及ぼしているトレンドと、それらがどのように当社に影響を及ぼす可能性があるかも検討するため情報を集めました。
また、ホテル業界に影響を与える可能性のある政府の規制や政策の変更も、ホテル業界に影響を与える可能性があるので集めました。
競合他社が現在行っているプロモーションやマーケティング・キャンペーンについても調査しました。
さらに、競合他社が取り組んでいる提携や協力関係、そしてそれらがホテルの市場にどのような影響を与えている可能性があるかも収集しました。
また、地域の観光産業や経済状況についてもデータを集めました。
ここには、その地域を訪れる観光客の数に関するデータも含まれます、
人気のある観光地や、今後予定されているイベントやアトラクションなど、組織に影響を与える可能性のあるデータを集めました。
さらに、G D P成長率、失業率、個人消費などの地域経済に関するデータも収集した、
地域の失業率、個人消費などの地域経済に関するデータも考慮し含めました。
データは、地方自治体の統計、観光局、観光協会、経済予測などを通じて収集しました。
ホテルの評判や地域社会でのポジションについてもあつめました。
それは、顧客からのフィードバックや、書き込みのレビュー、地元の新聞報道などの情報を集めました。
また、ホテルが受賞した賞や称賛の言葉なども集めました。
さらに、地域住民や頻繁にホテルを利用するお客様を対象に、アンケート調査やフォーカス・グループも実施しました。
このホテル事例をみて、どうお感じにになりましたか?
集める情報が意外に多いと驚かれましたか?
はい、これぐらい集めれば、自社のポジショニング決定や今後の戦略立案のための材料に十分なります。
集める材料が多ければ多いほどいいと、冒頭でお伝えしたことが実感いただけると嬉しいです。
情報をまず集めよう
SWOT分析は、ただ筆記用具を手に持って、4マスのうえに、項目を書いていく作業でないということがわかっていただけましたか。
集めるべき情報が多岐にわたることも、理解いただけたかとおもいます。
さて、あなたは、どのような種類のデータを収集すべきか、自社で行うことがわかったら、さっそく情報収集に着手しましょう。
ひとまず、5日後を目途に、収集の期限をきってみてください。
情報のピースが集まったら、やっと、次は、強みを明確にする作業にはいります。