SWOT分析を使ったことがありますか?
事業戦略を決めるとき、新商品開発をはじめるとき、マーケティング戦略を決めるとき、さまざまなシーンで、SWOT分析が役立ちます。
わたしも、商品を新しくつくる支援や、マーケティング活動を新たにはじめられるときの支援では、いつもSWOT分析のご案内からはじめています。
でも、いつも、SWOT分析の解説は、「新製品をつくるための一段階」「マーケティング活動を成功させるための一段階」という位置づけでのご紹介だったため、さほど重要な分析ツールと認識されてこなかったかもしれません。
SWOT分析を軽視されうまく利用いただけなかったために、新商品開発や、新規事業開発のときに、経営者ご自身のこだわりを優先されてしまい、ご自身の強みをうまく使っておられないケースもみうけられます。
そこで、SWOT分析を有効に活かすための、情報収集の仕方や、各象限の定義の仕方、分析の仕方を、現場で使えるものとできるよう、もっと詳しくお伝えしなければとおもいました。
ここでは、SWOT分析を懐刀として使いこなしたいと考える、経営者、管理者、サポート担当のあなたの頼れるバイブルとなれるよう、シリーズで記事を書きます。
まずは、SWOT分析の定義、SWOT分析の用途と応用、SWOT分析作業を8つのステップをご紹介します。
目次
SWOT分析の定義
SWOT分析は、戦略的に計画をたてるための道具です。
このSWOT分析の基本をまずこの記事でご紹介します。
SWOT分析を使うことで、あなたは競合他社からうらやましがられるほどの業績をあげることができるでしょう。
SWOTとは、強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)の頭文字をとったものです。
これは、事業組織の、内部要因と外部要因を評価し、成功のための戦略を策定するための方法です。
内部と外部の要因を同時にながめることができるので、いわば、究極の自己反省会を自己内でもつことができるのです。
さきほど、SWOTの各要素は、強み、弱み、機会、脅威の頭文字だとお伝えしました。
では、その強みは何に対する強みなのか、弱みとはどういうものを指すのか、気になりませんか?
強みとは、競合他社に対する優位性のことを指します。
例えば、強力なブランド、熟練した労働力、あるいはユニークな製品やサービスなどが強みとして挙げられます。
言い換えれば、競合に対して、大いに自慢したいいことです。
弱みとは、組織のなかの弱い部分や、あるいは改善の余地がある部分を指します。
例えば、弱点として、財務体質の弱さがあれば、ここに挙げられます。
不十分な資源や、非効率なプロセスは、言い換えれば、隠しておきたいことですよね。
これら、秘密にしたいことは、弱みになります。
機会とは、組織に利益をもたらす可能性のある外部要因のことを指します。
例えば、組織が活用できる新しいトレンドやテクノロジー、規模拡大する市場、あるいは業界に有利にはたらく規制の緩和などがあげられます。
言い換えれば、追い風の要素です。
脅威とは、組織に害を及ぼす可能性のある外部要因を指します。
例えば、強力な競争相手の出現、景気後退、災害、消費者の嗜好や行動の変化などが、脅威としてあげられます。
つまり、外からやってくる、私たちを夜も眠れなくするものです。
どのようにSWOT分析を行うのか?
まず、組織やプロジェクトに関する情報を収集するところから始まります。
収集する情報としては、財務データ、市場調査、顧客からのフィードバックなどです。
これらの情報を手に入れたら、次に、その組織の強み、弱み、機会、脅威を特定します。
SWOT分析の小さな例
あなたが商店街のなかの小さな雑貨店のオーナーで、ビジネスの分析を行いたいとします。
強みのひとつは、あなたを慕ってくださる顧客と、繁華街の一等地で商売しているという立地であることだとします。
弱みは、オンライン販売が有効に働いていないことかもしれませんね。
また、機会としては、顧客に紹介できる新商品があることだとします。
脅威となるのは、大型の競合他社が100m先に出店したことかもしれません。
これらの情報をもとに、次のような戦略を立てることができます。
・ファン顧客と好立地を活かして売上を伸ばす戦略をとる。
・新商品を投入し新規顧客を獲得し売上を伸ばす戦略をとる。
・自社の弱点に対処するため、ウェブサイトやオンライン・ショップの開設など、強力なオンラインでの販売場所を構築する。
・自社取り扱いの製品や、提供サービスを差別化し、大規模な競合他社に対抗する。
などです。
このように、SWOT分析は、シンプルかつ強力に事業を推進させるツールになるのです。
SWOT分析はどんなことに有効か?
SWOT分析は、組織が自らの立ち位置を理解し、将来の方向性について十分な情報に基づいた意思決定を行うのに役立つ、シンプルで、かつ、強力なツールです。
これは、どんな業種・業界でも、そして、どんな規模の組織にも、有効なツールです。
個人でも組織でも、自社のポジションを評価し、将来の方向性について十分な情報を得た上で意思決定するための手段として使われています。
組織も、企業ばかりでなく、公共部門や非営利団体、学術機関でも広く使われています。
SWOT分析がこれほど普及したのは、シンプルで使いやすいからです。
使い方に熟知していなくても、忙しく時間がないときでも、SWOT分析のエッセンスを少しは取り入れることができます。
しかも、SWOT分析は、シンプルだけれど、汎用性があります。
SWOT分析は、戦略立案、市場分析、プロジェクト管理、さらには企業経営の方針決定など、あらゆる場面でことに活用できます。
また、それだけでなく、個人の生き方に関する意思決定の領域までつかえます。
たとえば、SWOT分析を使って、次のキャリア計画を策定したり、強化したい人間関係の状況を把握したりすることもできます。
SWOT分析に欠点はあるのか?
SWOT分析はシンプルです。
むしろシンプルすぎるかもしれません。
複雑な要因を考慮せずに見過ごしてしまうという意見があります。
また、ひとつの情報を、SWOTのどの象限に置くかは主観的で、バイアスがかかりやすいという意見もあります。
しかし、このような批判にもかかわらず、SWOT分析は、広く使われる貴重なツールでありつづけています。
SWOT分析は、いわば水晶玉のようなものです。
自分たち自身が、自分の立場を理解し、将来の方向性について十分な情報に基づいた決断を下そうとするときに、貴重なツールであることにかわりはありません。
だから、もしあなたが、会社の方向性に迷ったり、自分の判断に確信が持てなくなったりしたら、SWOT分析のマトリックスをサッと手で書き、情報をそれぞれの枠のなかに書き出してみてください。
SWOT分析は、あなたをいつもサポートしてくれます。
SWOT分析の用途
SWOT分析には、多くの利用場面があります。
・新しい市場や競合他社の影響を評価し、戦略計画をたてるとき
・製品開発のとき
・マーケティング戦略立案のとき。
・チームビルディング
・能力開発
だから、もし、方向性に迷ったら、まず、SWOT分析をつかってみることをおすすめします。
意外な発見があるかもしれません。
SWOT分析の使い方 8つのステップ
SWOT分析導入のための、8つのステップをご案内します。
ステップ1:目的を明確にする。
まず最初に、分析の目的を明確にすることは不可欠です。
ここでは、「分析を行うことで何を達成したいのか?」をまず明確にしましょう。
新しいマーケティング戦略を開発するための、ビジネスチャンスを特定することですか?
あるいは、組織の現在のパフォーマンスを評価するためですか?
目的を明確にすることで、情報収集の作業や、定義のそれぞれの作業に集中することができます。
ステップ2:情報収集
次は情報収集です。
集める情報は、組織に関する内部情報と外部情報の両方があります。
内部情報には、製品、サービス、財務、人事などのデータが含まれます、
外部情報には、市場、競合他社、業界動向、経済状況、法的規制などです。
より多くの情報を集めれば集めるほど、SWOT分析の精度は高まります。
ステップ3:強みの特定
組織の強みを特定します。
強みとは、あなたの組織がもつ競合他社に対する優位性です。
組織のもつ、肯定的な内部要因です。
例えば、ログハウスでミーティングができるとか、世界一のコーヒーメーカーがオフィスにあるとか、そういった自慢できることです。
ステップ4:弱点の特定
このステップでは、組織の弱点を特定します。
例えば、厳格な服装規定があるとか、人里離れた場所にオフィスがあるといったことです。
ステップ5:機会の特定
このステップでは、あなたの組織が活用できる外部の機会を特定します。
機会とは、あなたの組織に利益をもたらす可能性のある、ポジティブな外部要因です。
例えば、製品を販売するための新たな市場が生まれていること、業界に革命を起こすような新技術の開発があったこと、などです。
あなたの組織や事業にとっての追い風はもちろんです。さらに、業界にとって追い風になること、地域にとって追い風になることも含まれます。
ステップ6:脅威の特定
次のステップは、脅威を特定することです。
これは、組織の業績に悪影響を及ぼす可能性のある外部要因を指します。
例えば、新たな競争相手が市場参入したとか、事業運営を混乱させるような自然災害などがおこったことなどがあげられるでしょう。
新型コロナウイルスの感染がはじまったころは、まさに、脅威となる外部要因として「コロナ」と書く事業者様が多かったことでしょう。
ステップ7:計画の策定
強み、弱み、機会、脅威が特定されたら、次のステップは計画を策定することです。
ここでは、SWOTマトリックスの各項目に対処するための具体的な行動を特定します。
SWOTマトリックスの、例えば弱点が特定されたとします。
すると、その弱点に対処するための計画を策定することができます。
例えば、人的資源に乏しいというのがあがっていたとします。その対処のために、研修に投資するとか、新しい従業員を雇うなどが対処法としてあげられるでしょう。
そのための計画を策定することができます。
機会として、新市場の誕生や、新商品の発売開始などがあるとします。
すると、その機会を活用するための計画を策定することができます。
計画策定では、組織の強みを効果的に活用し、弱みに対処し、その強みを生かすことが定石です。
計画作成の方向性の鉄則は、組織の強みをまず効果的に活用することです。
そのために、弱みに対処し、機会を活用し、脅威の影響を最小化する計画を作成します。
私たちは、4象限に分割されたSWOT分析シートというツールを使って、この計画の策定方法をこのあと学んでいきます。
ステップ8:モニタリングと修正
SWOT分析プロセスの最後のステップは、計画をモニターし、修正することです。
SWOT分析を定期的に見直して、計画が今も適切であることを確認し、必要があれば軌道修正していきます。
以上がSWOT分析導入の8つのステップです。
あなたの組織にSWOT分析を適用することで、あなたはより良い意思決定ができるようになり、ビジネスの全体的なパフォーマンスを向上させることができるようになります。
SWOT分析ツールを使いこなす
ここでは、4象限に区切られた、SWOT分析のマトリクスツールをご紹介します。
このツールを使用することで、SWOT分析をより深く掘り下げることができます。
SWOT分析は、組織の強み、弱み、機会、脅威を特定するのに役立つ強力なツールです、
そして、これらの情報を整理し計画策定するために、シンプルで使いやすいのが、SWOT分析のマトリクスツールです。
SWOT分析のマトリクスシートは、シンプルに、ただ4マスで区切られたものです。
このなかに、これから収集するすべての情報を文書化することができます。
左上の枠は強み。
右上は弱み。
左下は機会。
右下は脅威です。
上段の強みと弱みは、内部要因です。
下段の機会と脅威は、外部要因です。
SWOT分析を8つのステップにしたがって進めていく中で、私たちはこの4つの枠の中に情報を記入していきます。
このマスが埋められ、分析が終わるころには、私たちは組織の現状を明確に把握することができるようになっています。
ただ、忘れてはならないことは、このマスは単に情報を整理するための便利なツールではないということです。
SWOT分析のさまざまな要素間の関係を、素早く簡単に見ることもできるようにもなっていることを見落としてはいけません。
例えば、強みが、機会にもつながるかもしれません。
あるいは弱点も、機会につながるかもしれません。
情報をすべてマスに並べることで、私たちはこれらの関連性を素早く特定することができ、
より包括的で効果的な計画の策定に役立てることができます。
SWOT分析をめるときは、まず、分析ツールのシートを手元に置いてください。
手書きでさっとA4用紙に、マスを書くだけでできあがります。
必要な情報をあつめたら、マスに記入するようにしてください。
分析が終わるころには、あなたの組織の現状を理解し、次のような計画を立てるのに役立つ、貴重な資料ができあがります。
これは成功へのロードマップにも、あるいは、コンパスの代わりになるものです。
SWOT分析入門はここからはじまります
この記事では、SWOT分析の定義、SWOT分析の使い方、SWOT分析導入の8段階プロセスをご紹介しました。
次の記事で、SWOT分析導入の8ステップの1番目、目標設定について、詳しくご紹介します。
では、また次の記事でお会いしましょう。