お金の流れを理解して、より攻めの経営ができるようになっていただくレッスンをしましょう。
お金のこと税理士さんにまかせてるからと、どんぶりで経営してませんか。売上はちゃんと管理してるよとおっしゃるでしょうか。
お金のことが、売上や経費という経理・税務面からだけでなく、利益の見方からわかると、未来についてのいろいろな判断や選択がしやすくなります。
目次
こんな方に読んで欲しい
たとえば、こんなこと、しっかり理解したいかた、ぜひ、このブログを読んでください。
1、身の丈にあった地代家賃の額を決められます。不動産屋との交渉で、ずるずると、相手のいいなりになって、胃をキリキリさせる必要もありません。
2、スタッフの人件費や、社長の役員報酬を、いま、どれぐらいの額に設定したらいいかわかります。
3、今後、会社も利益を伸ばし、スタッフ給与を伸ばすためにお金がどうつかわれていて、どれぐらい必要なのかを知る共通認識の土台になります。売り上げをのばしたって、自分のポケットには入らないと、しらないふりをする従業員がでなくなります。1千万円プレーヤーになりたい従業員がいたとしましょう。夢をかなえるには、これだけの売上が必要だからね、といえるわけです。
4、ビジョンを達成するために必要な利益からみて、必達の粗利、必達の売上高がわかります。なんとなく、前年度10%アップの売上高アップの目標では、スタッフのモチベーションがあがらないのは当然です。そこにストーリーがないのですから。でも、図をみなで理解できれば、ビジョンを実現させるための道筋をストーリーで共有できます。
5、いくらまでなら、借りていいか、借入の限度額がわかります。大抵の方は、「かしてくれる上限をかりたい」という思考ですが、銀行にへこへこするだけです。利益のなかから元本を返済することを理解できれば、金融機関に対して、「あなたの給与をわたしたちといっしょにつくるわけです」という姿勢で、交渉に臨めます。
6、広告費をかけるとき、リターンの目標数値もでます。
そういえばとふりかえってみれば、なんとなくで運転してきてませんでしたか?
もやもやしてませんでしたか?
自分で数字が簡単に追えて、目で見えて事業を舵取りできれば安心しますよね。
どんな風に安心するのか例でみてみましょう。
キャッシュフローが明確になってお悩みを解決されたA社さんの例
例として、こんな一人社長さんのお悩みををあげて、一緒に解決してゆきましょう。
(この例は、ご相談事例を元にしてはいますが、守秘義務もありますので、実在の企業様のお話しとは異なるところがあります)。
社長様の専門のご職業は、イメージアップ・コンサルタントさん。
事業では、化粧品販売部門もあり、また法人取引もお持ちのため、株式会社で運営されています。
ご相談のきっかけは、売上を伸ばしたい、事務所を引越ししたい、だけれど身の丈にあわない家賃は払いたくない、というお悩みからでした。
この会社さまをA社様と呼びます。
最初の、ご相談は、「どれぐらいのテナント物件費用なら、自社は現状の売上のままでも1年は耐えられるか」?
そこで、まず、現状のお金の流れをおおまかにしっていただくことにしました。
キャッシュフローを使って理解いただきます。
ご相談のA社様の、収益の源泉は2つありました。
毎月定期的に発生する売上として、化粧品販売。
単発の売上として、イメージアップ・コンサルティング。
そこで最初に、毎月のお金の流れを、簡単な図でご理解いただけるようにしてみました。
売上高が100あったとします。
このとき、イメージアップ・コンサルティングの売上がなく、定期的に発生する化粧品の売り上げだけと仮定します。
化粧品の仕入れは、すべて変動費です。
化粧品の仕入れ掛け率は、5掛とのことなので、粗利は50となります。
その粗利のなかで、役員報酬を含めた給与と事務所家賃を支払える額の合計を収められれば、赤字にはなりません。
粗利のうち、50%を人件費(給与)としてあてているとしたら、残りは25ですね。
残りの25で、事務所家賃とその他経費をすべて賄い、利益を残せる配分を考えれば、「身の丈にあわない高額な事務所」を借りるかもしれないという心配がなくなります。
このように、どこをいじったら赤字になるかがわかりやすくなり、図で見れば、安心しますね。
A社さんの場合、トータルビューティーにのりだすためのイメージアップ・コンサルティングに関連する売上は、変動費がかからない商売となります。
なので、コンサルティングメニューの充実は、粗利、ひいては利益のアップにダイレクトにつながります。
3年後には、セミナールーム兼事務所兼のエステサロンにするためのパージョンアップ移転を目標にして、最初の移転の課題を解決されました。
3年後に借りたい物件のテナント料の相場はすでにわかっているので、さらに次に移転するためには、どれぐらい粗利をもっていなければならないか、数字で目途が付きます。
となれば、トータルビューティーメニューや、イメージアップ・コンサルティングであとどれぐらい売上ををげなければならないか、そこまでのばすためのメニューはなにをどう開発すればいいか、月額課金のサービスを開発するとすれば、どのぐらい利用いただかなくてはいけないか、ここで目途かつきます。
ビジョンにつながるため、利益をどう生み出すかという考えの流れが、とても論理的に整理されます。
ビジョンとお金が連動する仕組みが、わかっていただけたでしょうか。
※A社さんは、実際には、1年後に、理想の移転を前倒しにされました。
税理士先生の役割
「わたし数字に弱いんです。経理はすべて税理士さんにおまかせしてます」とおっしゃる経営者さんが多いです。
でも、税理士さんは、過去からつながってきた、過去の成績と今の利益とのかかわりをおしえてくれるだけです。
ビジョンを達成するための利益をどうつくるか、そのために価格をどうするか、商品構成をどうつくってゆくか、その顧客をどう育ててゆくかという未来をつくる思考につなげられるのは、経営者さんが考えなくてはならないことです。
先の例で、ビジョンにつながるための利益づくりの考えのながれは、税理士先生に聞かずとも、図を書けば簡単にわかりそうというのが、なんとなく感じていただけましたでしょうか。
ビジョンを実現させるための、あなたの事業のキャッシュフロー図、ご自身で書けるようになってみましょう。
キャッシュフロー図を書く
ここから一緒に、あなたの会社のキャッシュフロー図を、書いてみましょう。
とくに、このブログの読者さんは、コンサルタントやコーチといった、人的サービスが中心の事業をされている方が多いので、そのような人的労力のサービス提供を主とされているかたを対象にして書いてみます。
(業種ごとに、特徴的な、キャッシュフロー図になります)。
準備するもの
まず、お手元に、昨年度の決算書をご用意ください。
そして白紙もしくは方眼紙をご用意ください。
エ-! 決算書は、税金払ったらもう仕舞っぱなし~という経営者さんも、どうか面倒がらずに、いま、お手元にご用意ください。
ほんと、決算書さえあれば、この図を書く作業は、合計15分で終わるのです。
探す時間や、管理場所へとりにゆく時間のほうがかかる方も、この機会にご自身の目で確認するためにお手元にご用意ください。
書く手順
まず、あなたの会社のお金の流れを図にしていただくための手順をご説明します。
特に、人の力に依存する業種に役立つ内容です。
4つの段階にわけてご説明します。
1、売上高
紙の左側に、縦長のボックス図を書いてください。
そして、売上高、と書いてください。
こんな風に。
まず縦長のボックス図を紙の左側に書く
そこに、あなたの会社の決算書のなかの「損益計算書」をみて、売上高をひっぱりだしてきて記入しましょう。
切り捨てのキリのいい数字でいいです。
例えば、4億円の売上があったとしたら、400の書き込みで、かまいません。
売上高の数字をボックス図に書き込みます
2 変動費を探す
変動費を特定します。
決算書には、変動費という項目がありません。
なので、ここは、決算書の「損益計算書」と「販売費及び一般管理費内訳書」をみて手をうごかしていただく段階です。
売上高に連動して、減ったり増えたりする費用の項目はどれかを探してみてください。
あなたの会社のなかで、なにが変動費にあたりますか?
たとえば、こんなものはどうか検討してください。
材料仕入れ費
外注・業務委託費
交通費
水道光熱費
項目を特定したら、その項目と費用額を書き出し、合計してください。
なお、項目特定にあまり神経質にならなくてもかまいません。
これだけは間違いない、という項目さえおさえられていれば大丈夫です。
時間をとって精査することが、この作業で重要なことではないためです。
(気になるかたは、顧問税理士さんや会計士さんにご質問ください)。
変動費の項目を特定し、その項目の数値を合計したら、変動費が出ます。
次に、先に書いた売上高のボックス図の右側に、丈の短いボックス図をくっつけてください。
そして変動費、と書いてください。
こんな風に、
変動費のボックスを、売上高の右側上のほうに描きます。そして変動費額を書き入れます。
そして変動費合計額が、たとえば8千万円だったとしたら、80と書き込んでみてください。
実は、この変動費の項目の数値を書くところが一番面倒です。
ここを超えれば、次は軽い軽い。
3 粗利を計算する
ボックス図では、左に売上高の枠があり、右の上の枠に変動費がきましたね。
変動費まで書いた図。
変動費のボックスを、売上高の右側上のほうに描きます。そして変動費額を書き入れます。
右の下が空いています。
この枠は、粗利になります。
あなたの会社の粗利額は、いくらですか?
書き込んでください。
いま例であげている会社は、4億円の売り上げ高にたいして、8千万円の変動費でした。
なので、粗利は
4億円-8千万円=3億2千万円
になります。
事業において大切なのは、この粗利です。
なぜなら、変動費は、売り上げがあがっても、そのまま外へでていってしまう額だからです。
粗利は、売上があがったら、あがった分だけ残るお金です。
社長さんにみていただきたい利益の数字は、この粗利です。
ちなみに、引き算して粗利を出す引き算だけの作業がちょろいと感じられる余力があれば、粗利率もだしてみてください。
粗利率=粗利/売上高×100
例の場合では
粗利率=80/400×100=20%
です。
粗利率は、業種によってかわります。
また、同じ業種でも営業形態によっておおきくかわります。
たとえば、人の力で稼ぐ美容室の場合、同じ美容業界とはいえ、業務委託と、普通の美容室では大きく違う図になります。
業務委託は、人件費が成果連動型です。
なので、変動費が大きく、粗利率が普通の美容室よりすくないです。
業務委託の美容室の図です。完全成果連動型なので、変動費がおおきくなります。
普通の美容室は、給与が毎月一定です。
なので、固定費部分が大きくなります。
従来からある、スタイリストさん・アシスタントさんを自社内で育てている美容室さんの図です。
大きく違いますね。
ただ、どちらの図の事業であっても、事業継続のため経営の安定化をはかるためには、粗利を大きくする、つまり粗利率を高める経営努力が必要です。
クオリティーアップなどで、顧客に提供する価値の拡大を図る経営努力がそれにあたります。
もしいま繁盛していたとしても、なにもしなければ、周囲が価値アップをはかれば、相対的自社の価値がさがり、あっというまに粗利はさがります。
また、値引きをしても、粗利はあっというまにさがってしまいます。
粗利率は、なにもしなくても簡単に下がってしまう恐ろしさがあります。
値引きで集客しないほうがいいという理由、今うまくいっていても、ずっとそのままそれがつづく保証がないというのはここをみればわかりますね。
自社の図を描いてみると業界のなかの立ち位置もわかります。
おっと。
横道にそれました。
4 固定費
固定費は、文字そのままの意味です。
売上の増減にかかわらず、固定的にでてゆく経費です。
毎月一定の額がでてゆく経費項目は、あなたの事業ではなんでしょうか。
たとえば
人件費(ボーナス・役員報酬・給与・法定福利費すべて含む)
地代家賃
保険料
リース料
などがあげられますね。
固定費を積み上げて、「固定費」項目の額をだすのは面倒ですか?
であれば、少々乱暴ですが、変動費以外の費用を、すべて固定費にしてしまってかまいません。
もっと乱暴な計算ですが、さらに簡単な計算方法をお伝えします。
決算書の「損益計算書」をご覧ください。
1番で売上高を書き込み、2番で変動費を書き込みました。
売上高から変動費を引いた粗利が、ボックス図の右下にありますね。
いまこんな図になってます。
社長さんにみていただきたい利益の数字は、この粗利です。
その右下のボックス図を、さらに5つに細かく分けてみてください。
5このボックス図をつくる
粗利ボックスを5つに分けましたか?
その粗利ボックス図を5つにわけたうち、1番下に 、税引き後の「当期純利益」の数字を書き込んでください。
当期純利益を書き込む
「税金」の数字を、当期純利益の上のボックスに書き込みます。
税金を書き込む
その上の3つの残りの枠を薄墨色で統一させます。
この3つの枠が固定費になります。
薄墨色が固定費
3つの内訳は、ボーナスや役員報酬や給与をすべて含めた「人件費」と、「地代家賃」と、「その他固定費」です。
人件費等を書き込む
さあ、これで、あなたの事業のお金の流れがわかる図が出来上がりました。
※水道光熱費を、固定費ととらえる事業所もあります。
それは、実体あった振り分けにしていただければよく、どちらが正しいというのはありません。
※ここでは簡便化のため、固定費資産がない事業所を想定していますので、減価償却費の足し戻しはとりあつかっていません。
※ 人件費は固定費のなかの5割程度がひとつの目安です。でも、人件費が固定費の大半を占めるご商売もありますね。まず、この図を書いてみて、少ない人件費で多くの粗利を稼げる工夫を考えるために、見える化が改善の第一歩につながります。
この図が書けたら何がいいことがあるのか?
お金の流れを図式化して、固定費がわかったら、経営上どんないいことがあるのか?
それが、ずばり、このブログの最初にお伝えした6つのことです。
1、身の丈にあった地代家賃の額を決められます。不動産屋との交渉で、ずるずると、相手のいいなりになって、胃をキリキリさせる必要もありません。
2、スタッフの人件費や、社長の役員報酬を、いま、どれぐらいの額に設定したらいいかわかります。
3、今後、会社も利益を伸ばし、スタッフ給与を伸ばすためにお金がどうつかわれていて、どれぐらい必要なのかを知る共通認識の土台になります。売り上げをのばしたって、自分のポケットには入らないと、しらないふりをする従業員がでなくなります。1千万円プレーヤーになりたい従業員がいたとしましょう。夢をかなえるには、これだけの売上が必要だからね、といえるわけです。
4、ビジョンを達成するために必要な利益からみて、必達の粗利、必達の売上高がわかります。なんとなく、前年度10%アップの売上高アップの目標では、スタッフのモチベーションがあがらないのは当然です。そこにストーリーがないのですから。でも、図をみなで理解できれば、ビジョンを実現させるための道筋をストーリーで共有できます。
5、いくらまでなら、借りていいか、借入の限度額がわかります。大抵の方は、「かしてくれる上限をかりたい」という思考ですが、銀行にへこへこするだけです。利益のなかから元本を返済することを理解できれば、金融機関に対して、「あなたの給与をわたしたちといっしょにつくるわけです」という姿勢で、交渉に臨めます。
6、広告費をかけるとき、リターンの目標数値もでます。
そういえばとふりかえってみれば、なんとなくで運転してきてませんでしたか?
もやもやしてませんでしたか?
お金をの流れを図で見える化した、A社さんが、ひとまず家賃上限をきめて1回目の引越しをされ、そして3年後の再移転を目標を前倒しにされて1年半後にされたのは、上記のような「必達ストーリー」があったからです。
なんとなく、「儲かっている」とか「儲かっていない」という言葉をつかっています。
あなたにとって、指標となっている利益はどこですか?
粗利を見ていますか?
税引き後当期純利益をみていますか?
どこをみたら、あなたの課題を解決するための次の一歩にふみだせるか、ここまででわかりましたよね。
ビジョンと利益はこうやって連動して、追及でます。
想いは、言葉にすれば、叶います。
(補足)キャッシュフローというと、減価償却費の足し戻しが本来なら必要です。ですが、今日の例は、固定資産がない会社さんを例にしたので減価償却費がありません。