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既存事業のテコ入れを考える時も、新たな事業を構想する時も、まずはマーケティングの基本情報の定義(既存事業のテコ入れのときは再定義ともいう)から入る必要があります。
「ターゲットは誰か」「ニーズは何か」といったマーケティングの基本要素はもちろん決まってますね。
さてその次、「ポジショニング」の定義(再定義)が必要です。
このブログ記事では、ポジショニングの定義(再定義)のときに、マーケティングのよくみかけるフレームワーク3C分析をつかって、ポジショニングを確定させる作業を行うあなた自身に、自信をもってもらって、進んでもらえるようになることを目指します。
ちなみに、AIにポジショニングの分析をたのむときも、3C分析の視点をいれて、といって指示文をつくると、もれなくぬけなく提案してくれるので、ぜひ試してみてください。
1、なぜ、「ポジショニング」の定義(再定義)が必要か?
答えは単純です。世の中は常に動いているからです。
かつて「自社だけの場所」だったはずのポジションも、「自社が優位になるはずとおもっていた」ポジションも、時間の経過とともに競合他社が進出してきたり、顧客のニーズが変わったりして、いつの間にか「ただの激戦区」になっている可能性があります。あなたがサービスを改善している間にも、思いついた間にも、競合もまた、常に前進を続けています。あなただけが前進しているわけではないのです。
だからこそ、市場調査という時間とコストがかかるプロセスに入る前に、「あなたの居場所が、本当に、あなただけのものなのか」をしっかり確認することがまず大事なのです。
なぜなら、市場のなかで、顧客からあなたが選ばれなければならないのです。自分は唯一無二だと思っているのは、傲慢です。
なお、わたしの経験から、このポジショニングの確認作業は、少々時間がかかります。
縦と横の2本の線を引いて、4象限をつくります。その4象限のなかに、競合他社を入れて、あなたとどう違うのかを配置してゆく作業を行います。
最終的に、あなたが競合と比べて優位に立てる差別化要因をたった2つの軸で説明できれば、しめたものです。
そして、このポジショニングの定義(再定義)で最も守っていただきたい鉄則があります。
それは、軸に「価格」をもってこないことです。中小零細企業が、自社の強みとして「価格の安さ」をもってきては絶対にダメです。ここは死守しましょう。
価格競争ではない場所で、あなたの会社が選ばれる理由を論理的に見つけ出すためのツールこそが、次にご紹介する「3C分析」なのです。
2、ポジショニング定義(再定義)には「3C分析」が最も強い味方である
価格で競争をしないと決めた以上、曖昧なポジショニングでは戦えません。客観的かつ論理的に自社が勝てる場所を構築・再定義するために、最も有効な武器となるのが、「3C分析」というフレームワークです。
3C分析。
聞いたことはあるとおもいます。でも、どこで使うもの? どんなときに使うもの?と、思っていて、実際にこのフレームワークをつかったことがないひともおおいのではないでしょうか。
3C分析は、顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つの視点から事業環境を整理し、自社が立つべき独自のポジション(スイートスポット)を導き出すための設計図を導き出します。
この3C分析を、あなたの事業の「勝てるポジション」を見つけるために、どのように活用すべきか、それぞれの役割を詳しく解説します。
C1. 顧客(Customer/市場):真のニーズと市場の「大きさ」を知る
まず、ターゲット層の真のニーズと、その市場の規模や成長性を確認します。
- ターゲットとニーズの再確認: 「誰の」「どのような課題」を解決するのかを改めて深く掘り下げます。ここでは、当初設定したニーズにまだ満たされていない欲求がないか、既存事業の顧客からの声も含めて、ニーズを再定義します。
- 市場の再確認: そのニーズを持つ顧客がどれくらいいるのか、市場は今後拡大していくのかを冷静に判断します。数字で把握できていますか?
このステップで、自社が狙うべき市場に、「本当に存在する需要」があることを確信することが、分析の出発点となります。
C2. 競合(Competitor):自社が勝てる「空白地帯」を見つける
ポジショニング戦略において、最も頭を使うべきステップが競合分析です。
- 競合の強み・弱み分析: 主要な競合他社が「誰に」「どのようなサービス」を「どのような強み」で提供しているのかを徹底的に分析します。
- 【ポジショニングの源泉】「空白地帯」を探す 分析を通じて浮かび上がってくるのが、「顧客は求めているが、競合が提供できていない」というニーズの隙間です。この満たされていないニーズこそが、あなたの新規事業が「価格競争をせず、独壇場で勝てる場所」となる空白地帯です。
競合と同じ土俵で戦っていては、リソースの限られた中小企業に勝ち目はありません。競合が手薄、あるいは存在しない「ブルーオーシャン」を見つけ出すことが、成功への第一歩です。
しかも、わたしが上述したように、価格で「高い・安い」で軸を探さないのも、ひとつ大切なことなのです。
なになに? まだ、競合をピックアップもしていない?
では、まず、あなたの競合を3社ピックアップするところからはじめてください。
そして、競合の情報を、以下の項目を縦軸に表に整理しましょう。
主力商品 |
製法・こだわり |
価格帯 |
ターゲット顧客 |
販売している場所 |
SNS活用 |
SEO・Web広告 |
強み |
弱み |
自社との違い |
C3. 自社(Company):空白地帯を埋める「選ばれる理由」を作る
見つけ出した「空白地帯」を、自社の揺るぎない強みで埋めることができるかを検討します。
- 自社の「コアコンピタンス」特定: 自社だけが持つリソース、技術、ノウハウといった「核となる強み」を棚卸しします。
- 【選ばれる理由】差別化要因の明確化: この自社の強みが、C2で見つけた空白地帯を埋めるための独自の切り札になるかを確認します。もし、その強みが競合には簡単に真似できないものであれば、それがあなたの会社が「選ばれる理由」であり、強固なポジショニングとなります。
ここで、新規事業でも、既存事業の改善においても、役立つのがSWOT分析です。あなたが日ごろなにげなくやっていることでも、強みになるものがきっとあるはず。ぜひ、ひとりではなく、チームでSWOT分析にとりくんでみてください。
もしやり方がわからなければ、コチラ参考記事をお読みください。
3C分析は、これら3つの要素を総合的に照らし合わせることで、「市場のニーズがあり(Customer)、競合が手薄な場所で(Competitor)、自社の強みを活かして戦う(Company)」という、唯一無二の「勝てるポジション」を導き出してくれます。
ここで、繰り返しますが、決して、価格軸「安い・高い」をポジショニングで持ってこないように。
ちなみに、わたしが最近、生成AIと対話したチャット例をあげておきます。●●●のところは、現在準備中のコンテンツマーケのコンサルティングサービスの内容なので伏せますね。
「あなたの調査から競合を3つあげてもらって、ポジショニング差別化要因も提案してくれました。しかし、そのポジショニング差別化要因として提案してくれた2つのうちの、価格の軸が気に入らないので、別の軸での表現を探し直したいです。軸1「戦略構築もできる超伴走型サービス提供ができる・機動性がある」、という差別化要因が強みであるという点は残してOKです。あなたが提案してくれる別の軸を待つ前に、わたしから3つ、これらが強みの要素に付加できないか考えたものをあげますので、これも使えるなら使ってください。1、●●● 2、●●●3、●●●。 以上3つもふまえ、あなたからの新しい提案も含めて、差別化・ポジショニングのためのもうひとつ別の軸を、2つ提案してください。」
Aはこのあと2つの軸を提案してくれました。でも、やりとりから結局、競合対象が変更になる事態になり、再度競合調査からやりなおして、ポジショニングにもういちどもどってくるということにもなってました。
あなたも、手順は1方向だけでなく、行き来してもいいので、フレームワークのすべてをきちんと満たしているのか、以前からつづく会話との齟齬がないかどうかを、ご自身でチェックして、AIの言いなりにすすまないようにしてくださいね。
3. 「勝てるポジション」の明確化が劇的に作業を効率化する
3C分析を通じて、自社が狙うべき「勝てるポジション」が明確になったら、いよいよ次のステップ、つまり市場調査や具体的な営業活動、ブランドキットの制作に移ります。
この順序こそが、時間とコストを無駄にせず、中小企業の限られたリソースで最大限の成果を上げるための秘訣です。ポジショニングを先に決めることで得られる、具体的なメリットを見ていきましょう。
メリット 1:市場調査の「ムダ打ち」がなくなり効率が最大化する
ポジショニングが曖昧な状態で市場調査を行うと、「とりあえず競合の売上を調べよう」「とりあえず顧客にアンケートを取ろう」といった、軸の定まらない漠然とした調査になりがちです。これでは時間と費用ばかりかかり、結局「で、何をすべきなの?」という答えが得られません。
しかし、ポジショニングが明確になっていれば、調査のゴールが変わります。
- 何を聞くべきか?:設定したポジショニング(例:A社より高品質だが、B社よりセグメントが狭い「専門特化型」のソリューション)が、実際に市場で受け入れられるかを検証する質問に絞られます。
- 誰に聞くべきか?:そのポジショニングを必要としている具体的なターゲット層にのみ、調査対象が絞られます。
これにより、調査範囲が劇的に絞られ、得られたデータがそのまま事業戦略に直結する情報となります。
メリット 2:マーケティングメッセージが「鋭利な刃」に変わる
ポジショニングは、サービスを「一言で表現する言葉」になります。
あなたの会社が「競合にはない、この顧客の、この課題を解決する」という独自の立ち位置を明確に言語化できると、マーケティングメッセージは驚くほど鋭くなります。
たとえば、次のような明確な言葉で伝えられるようになります。
「弊社の[サービス名]は、[〇〇という課題を持つお客様]に、[〇〇という競合にない独自の強み]という理由で、最も優れています。」
このメッセージは、顧客に対して「これは私のためのサービスだ!」と瞬時に認識させ、数ある選択肢の中からあなたの会社を迷わず選ぶ理由を与えます。メッセージのブレがなくなるため、営業資料、ウェブサイト、広告、全てに一貫性が生まれ、集客効果も最大化します。
メリット 3:全社員の共通認識が生まれ、中小企業の機動力が最大化する
経営者がいくら「勝てるポジション」を知っていても、他のチームメンバーが理解していなければ絵に描いた餅です。
明確に定義されたポジショニングは、全社員が共有すべき戦いの場と戦い方の共通認識となります。
- 営業担当者:「価格」ではなく「独自の強み」を軸に自信を持って提案できる。
- 開発・製造担当者:ポジショニングを支えるために「どこにリソースを集中すべきか」がわかる。
- サポート担当者:顧客の要望の中でも「どこまでを自社の役割とするか」の判断基準ができる。
- デザイン制作担当 どの顧客に何を伝えるべきかが明確になり、デザインからとどけられるメッセージ効率が劇的にあがる
かかわる全員が同じ方向を向き、連携がスムーズになることで、これが中小企業の強みである機動力を最大化させることができます。
その結果、市場の変化に迅速に対応し、競合よりも早く次の手を打つことが可能になるのです。
4、まとめ
新規事業や既存事業の再活性化を成功させるには、おもいついたらすぐ市場へ飛び出すのではなく、まず3C分析で自社の「勝てる場所(ポジショニング)」を論理的に確定させることです。
ポジショニング再定義のときに3C分析をつかって、もれなく、ぬけなく定義しましょう。
あなたも、まず、真白なA3程度の大きな紙を用意し、真ん中に上から下への棒、右から左への棒線をひいて、その軸の名称を考えてみてください。競合が、どこに位置するのか、自社がどこへ位置するのかがめにつくようにわかりやすければ、しめたものです。
なお、この紙は10枚以上、書いては捨ててを繰り返して当然の作業になりますので、「すぐ決まらない」ことにくさらないでくださいね。
ちなみに、わたしがいま考えている軸名2つは、「コンテンツマーケ伴走・内製化支援 :コンテンツマーケ 代行」「海外btob : 国内btob」です。
お知らせ
マーケティングのフレームワークは、ただそこにあるだけでなくて、目的があって存在するものです。どんなときに、何のフレームワークをつかうといいのかなど、実務で使えるマーケティング基礎知識をオンラインで学べる基礎講座をお届けする予定です。
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あなたがご質問をおよせいただくと、それがカリキュラムにも入るかも。