「メールマーケティングが成功しているかどうか知りたいから、どの数字を、どう扱ったらいいか教えて欲しい」という声をいただきました。
そこで、計測すべき数値はどこで、どうみたらいいのか、どう活かせるのかを、お伝えします。
この記事は、あなたがご利用のメール配信プラットフォームから得られる数値をもとに、あなた自身が、効果を計測し、次への施策を実行してゆくことができるようにお伝えします。
筆者は、Mailchimpを用いていますので、用語や画面説明はMailchimpに依拠します。
メールマーケティングは、スタート時から、測定、評価、分析について、目標設定し、スタートする必要があります。
ここでお伝えする計測の3ステップは、その目標を設定したあとから始まります。
計画作成、主要な業績評価指標 (KPI) としての有用な指標の追跡、測定値からパフォーマンスを評価する、の3つが今日お伝えすることです。
順にみていきましょう。
目次
ステップ1 測定計画を作成
まず、キャンペーン(メール配信のことをいいます)を始める前に、計測するための一定時間を、定期的にそして継続的に確保するところからはじめます。
いつ、あなたが計測するか、その計測タイミングを決めます。あなたが事業として行う、メールマーケティング全体のメールのパフォーマンスを継続的に追跡する必要があるからです。これは、メールマガジンの成果を計測するだけでなく、不定期に送るローンチやセミナーの案内の計測も含みます。ここでは、KPI を設定する前に、まず毎週、毎月、都度送るキャンペーンごと、など、追跡スケジュールを確立することをお勧めします。定期的に確認することで、ベンチマークする数値や、過去のパフォーマンスと照らし合わせて、いまの進捗状況を確認できるようになり、改善または減少のパターンを簡単に見つけることができるメリットがあるからです。
また、定期的に計測を行うようにすることで、特定のキャンペーン、特定の顧客セグメント、特定の製品ローンチのパフォーマンスに影響を与える可能性のある外部要因に対応することも可能にします。
たとえば、業種によっては月ごとの繁忙期とのリンクだとか、季節イベントだったり、といった外部要因のことです。
ちなみに、和田は、Googleアナリティクスの定期計測を月末に行うことにしており、それにあわせてMailchimpのダッシュボードも確認するようにしています。つまり、1カ月に1回です。
ステップ2 追跡すべき指標をみつける
パフォーマンスの追跡は、キャンペーンの目標と目的に関連して実施されているからです。戦略立案の最初の段階で、明確な目標と目的を確立し、その遂行がなされているかどうかを測るKPIを決めておきましょう。計測数値を決めるときは、それらの指標がどの程度測定可能で、どのように測定できるか、よく調べておいてから決定してください。そもそもどのような指標があり、どのように使用できるかということについては、このステップ2のなかで、詳しくご説明してゆきます。
ステップ2-1 あなたのビジネスに適したメール配信のKPI を見つける
メール KPI は、キャンペーンのパフォーマンスを理解するのに役立つ指標です。メールの受信率、開封率、クリック率などが追跡されます。
Mailchimpでは、これらのデータは、キャンペーン毎に、レポート画面にまとめられています。
レポート画面では、時間の経過に伴うメールのパフォーマンスもみることができます。また、あなたのメールが、業界標準とくらべてどうかということも知ることができます。
※Mailchimpが発表している2022年のメールマーケティングの業界別ベンチマーケティング(リンク先は英語です。翻訳してご覧下さい)
https://mailchimp.com/resources/email-marketing-benchmarks/
レポートの数値を活用して測定計画を改善してゆくには、各 KPI の意味を理解し、あなたのビジネスにとって最も意味のある KPI はなにかを見極めてゆくことが大切です。
Open rate(開封率)
Open rate(開封率)は、受信者が開封したメールの数と、配信されたメールの総数を比較します。メールの件名の改善により開封率をあげることができるので、件名によるA/Bテストを行うときは、大切な指標となります。
Click rate(クリック率)
Click rate(クリック率)は、キャンペーンで追跡されたリンクをクリックした総受信者の割合を示します。メール受信者がリンクをクリックすると、その内容に関心があることが示されるため、エンゲージメントを測定するのに役立つ指標です。また、リンクをクリックした連絡先、リンクごとのクリック数、誰かがリンクをクリックした回数、およびキャンペーンで最もクリックされたリンクを追跡することも役立ちます。
Bounced(バウンス)
Bounced(バウンス)は、電子メール サーバーによって電子メールが拒否されたときに発生します。このデータはメール登録者を管理し、到達率を追跡するのに役立ちます。バウンスされる数が高いとコンテンツが配信されない (そして表示されない) ことを意味し、送信者のメールサーバーの評判が低下します。バウンスには、ハード バウンスとソフト バウンスの 2 種類があります。ハード バウンスは、メール アドレスが存在しないなど永遠にもうどうしようもない理由でメールを配信できなかったことを意味します。ソフト バウンスは、受信トレイがいっぱいになったなどの一時的な理由での未到達を示します。
Unsubscribes(登録解除)
Unsubscribes(登録解除)は、あなたのメールマガジンから自分自身を解除した人々を示します。登録解除で、配信停止を選択する人は常に一定数います。データを定期的に追うことで、メール受信者にとって価値のあるコンテンツを配信しているかどうかを判断できます。人はさまざまな理由でマーケティング メールの購読を解除します。でも、解除率が急激に高まるときは、対処が必要な問題があることを示している可能性があります。
ステップ2-2 メールがビジネス全体に与えた影響を確認する指標を計算しよう
メール キャンペーンがビジネス全体に与える影響を理解するには、測定したデータから、全体的な目標に対して、どのように貢献しているかをみることでできます。つまり、計測値からパフォーマンスを表していきます。
そのための、マーケティング KPIをここでは、確認しておきましょう。これらは、ステップ2-1で出したKPIから、ご自身で計算して導出します。
コンバージョン率
コンバージョン率(Conversion rate)は、望んだアクションを実行した、メール受信者の割合を測定します。たとえば、あなたの送信する電子メールの目的が、オンライン イベントにサインアップしてもらうことであるとしましょう。この場合、コンバージョン率は、電子メールを受信した総数のなかの、サインアップした人の割合を計算します。メールマーケティングでは、メール視聴者にどんな行動を促すかを明確に示す必要がありますので、コンバージョン率を確認することは、その行動の促し方が成功したかどうかを評価するのに、大切な指標となります。
なお、ここでコンバージョンは、あなたの任意で設定できることを忘れないで下さい。製品を購入してくれた人をコンバージョンに設定する場合もあれば、プレゼント企画に応募してくれた人をコンバージョンに設定する場合もあります。
コンバージョン率計算の例
先日の和田美香オンラインスクールで開催した無料セミナーへの参加者募集のメールについて、コンバージョン率を計算してみました。実質受信者は362名。実際の参加者はちょうど30名でした。
このイベントに関するコンバージョン率は8.2%。
これより前の、無料セミナーのイベント開催時とくらべてみてどうかと考えると、4.3%減ったな、といったことがわかります。
ROI
ROI(投資収益率、Return on Investment)は、メール キャンペーンの費用対効果を測定します。数式は次のとおりです。(利益からコストを差し引いたもの) / コスト。1,000円の費用を払って、 10,000円を稼いだ場合、投資収益率 (ROI) は 0.9、つまり 90% になります。利益獲得をメールマーケティングの主要な目標においている場合、ROIの計算は大切です。
例として、フリーランサーの仕事受注を、時給換算コストで算出してみました。
ROI計算例 フリーランスのビデオ編集作業でROIを計算
ここでは、プロジェクトに費やした時間が、金銭的利益に見合うかどうかを判断するのにROIを利用できます。
ゆきこは大学院生で、毎月の奨学金をビデオ編集のフリーランスの仕事で補うことにしました。彼女はすぐに顧客を見つけることができ、最初の月に 2万円を稼ぐことができました。
この 2万円はお小遣いとしてはかなりお得ですが、ゆきこは、ビデオ編集に時間をとられ、研究活動に遅れをとっていることに気づきました。彼女は、編集作業時間をベースにして ROI を計算し、学業とフリーランスの仕事の間でどのくらいの時間を割くべきかを判断することにしました。
ゆきこは、ビデオ編集の仕事を完了するのに 20 時間かかっていたので、ROI を次のように計算できます。
ROI = 2万円/ 20 時間 = 1 時間あたり 1千円
ということでゆきこは、専門の研究に費やす 1 時間あたりの価値が 2千円を超えるには何時間費やすだけにしなければならないかを検討し、フリーランスの仕事に割り当てる時間を調整できるようになりました。
2022年現在、東京都の最低賃金は1,072円です。
デジタルコンテンツの制作やフリーランスの仕事が、時給換算したときに効率がいいかどうかを確かめるのに、客観的に計算でチェックます。やっておきたいですね。
CLV
Customer Livetime Value(顧客生涯価値、CLV)は、顧客とあなたのメールと関係がある期間中に、あなたのビジネスに費やすと予測される金額を示します。計算は、顧客の平均購入額、顧客があなたから購入する平均頻度、平均顧客単価、およびあなたの顧客でいる期間に基づいています。既存の顧客を維持する方が新しい顧客を見つけるよりも費用がかからないため、CLV を高く維持することはビジネスの成功に不可欠です。CLV が高いほど、あなたのビジネスのファン顧客が多いことを意味します。
CPA
獲得単価 (CPA) は、新規顧客を広告で獲得するために費やした金額がある場合の指標です。この数値は次の式で求めることができます: 総キャンペーン費用 / コンバージョン (有料顧客) = CPA. これは、キャンペーンがどれだけ成功したかも示します。
ステップ3 測定を次の行動に活かそう
キャンペーンが終わった後、もしくは、定期的な計測のタイミングで、収集したKPIをみて分析する段階です。戦略実行のタスクが、機能したか、あるいは機能していないかを確認します。分析では、クリック数が最も多いリンクや画像を分析することで、オーディエンス(メール受信者)を惹きつけているコンテンツの種類や話題も明らかにすることもできます。オーディエンスの行動を分析することで、彼らが何に興味を持っているか、どのコンテンツがアクションやエンゲージメントを促進するのに効果的でないかなど、メールマガジンをとってくださる方々についてより多くのことを知ることができます。
ここまでみてきたように、計測は、単に数値を拾ってきたりすることで終わるだけが、本来の仕事ではありません。
それらを、次のエンゲージメントの向上にどうつなげるのか、原因を考え、改善のための施策をたて、それを実行することが、測定の本来の意味です。
成功への近道は、測り続け、そして、改善策をくりだしつづけることです。
さあ、これを読んだあなた。グっときたところがあったら、まず、ステップ1のための、計測タイミングをいつにするか、あなたの時間をブロックすることを、いますぐやっておきましょう。
もし、すでにコンテンツクリエイターとして、デジタルコンテンツを販売開始しているひとは、直近のROIもすぐに計算しましょう。