「ちょっと話があるんですが、いいですか?」
この手の話しかけほど、経営者の心臓をドキっとさせることはありません。
また、辞める話か!!
まあ、辞めるときって、結構些細なことの積み重ねで、意見の相違が耐えられなくなり、でも表向きには一身上の都合でといって、辞めゆかれることになります。
大手のように誰もが応募してきてくれるわけではないので、いまいてくれるスタッフを大事にしたい、そんな経営者に、現場の仕事のひとつひとつをしくみ化しておくための、「きっかけの見つけ方」をお伝えします。
マニュアル作成の3段階
仕組み化のレベルには大きく分けて3段階あります。
1段階目 業務を支える日々の動きの仕組み化
たとえば、備品補充とか、掃除とか、来客対応、電話対応、ファイリング、他部署への報告仕方など、日常の、仕事にならないと見過ごされがちな仕事が、仕組み化されていることが、まず最初です。
けっこう、これが、各人に任せられている場合が多く、そのため、実はスタッフや幹部が我慢して疲弊している場合が多いです。スタッフ規模が大きいところでも、ここが細かく決まっているところは少ないでしょうか。
ここが仕組み化されていると、互いによけいなストレスがなくなります。
2段階目 営業など、売り上げが立つことに繋がる業務の仕組み化
売上につながる業務の仕組み化の段階になります。組織全体で優良な手段を共有できれば、「優秀な営業マンが辞めたら売りあげが減る」という心配もなくなりますよね。
ここができれば、経営者だけでなく、組織員みなが、1カ月程度の休暇を取ることかできるようになります。
ここまでできていると、中小規模でも、事業売却、つまり、M&Aで、フレキシブルに、拡大や縮小の変化をしてゆくことが可能な遡上にのぼれます。
3段階目 戦略構築の部分の仕組み化
ここは、小さな企業ですと、経営者がやらなければならない部分ですが、その部分でさえ、右腕を育て、チーム化し、仕組み化しておくことができます。新規事業や、長期的なビジョンに基づく取り組みの仕事が、仕組み化されているという段階です。
今日お話ししたいのは、1段階目の事務作業の着手は、まずどこからか、ということについてです。
マニュアル作成着手のきっかけはどこにある?
どこから、仕組み化を始めるのか?
大海にあてもなく泳ぎだすようでは、心もとないですね。
そこで、ヒント。
それは「もめ事が起こったらマニュアル化のチャンス!」というマインドをもとうとうことです。
もめ事がおこったら、マニュアル作成する!
そう経営者のあなたが決めてください。
メンバー同士の喧嘩仲裁でおわらせるのではなく、「業務としてどうなのか」という基準を、経営者としてきちんと示すことで、スタッフの負荷がかなり減ります。
よけいなストレスが無くなるだけで、職場環境もよくなり、スタッフ定着率もよくなります。
たとえば掃除のもめ事
もめ事かきっかけで、マニュアル作成を始められた例をお話ししましょう。
クライアント先の幹部ミーティングでもこんな話題がのぼっていました。
掃除でひどいもめ事があがってきている。
ベテランのある人は、棚をうえから綺麗にして、そして下を掃く順番が正しい。
いや、ホコリが舞うから、床掃きしたあとに、テーブルを拭くほうが正しい。
そんな対立の裁定を求められているとのこと。
また、こんな備品補充の苦情もあがっていました。
最後に使った人が、備品庫から補充し、備品庫もなくなったら、事務まで連絡するというルールなのにも関わらず、備品補充が徹底されていなくて、いつもわたしばかりが備品補充していて、不公平だという訴え。
さあ、あなたなら、どうしますか?
これは、仕組み化という観点からみたら、マニュアル作成の大チャンスです。
このとき、「ただの喧嘩仲裁」で、経営者や幹部が「気が付いたらやろう」ときれいごとでこれを収めてしまっても、なんの根本解決にもならず、同じ問題がなんどもまた火を噴きます。
なんで私がいつも拭かなくちゃいけない、補充しなければならない、という苦情は、ずっとやってきます。
ここでは、掃除というものは、どういう内容の作業を指すことが、この組織のなかでは求められているのかを、経営者がはっきり明確に指し示す必要があります。
みんなで話し合って掃除当番決めてくださいとか、掃除の仕方を話しあってくださいとか、仲良くやりましょうとかいうものではありません。
組織として、業務で、なにを求めれらるのかという基準を決めるのは、経営者のあなたです。
仕事を成したと認められるのは、どんな項目、作業を完了した場合なのか?
これは、掃除にも、バックオフィスのどんな小さな仕事にもあてはまります。
誰かがやってくれるから、自分がやらなくいいという組織では、かならず、不平不満から離職者がでてしまいます。
経営者は、「仕事と認める基準」を示す必要があるのです。
なので、もしまだ仕組みかにこれから着手するっていう段階では、まず揉め事が起こったらラッキーととらえ、その部分をマニュアル化していくという手順がお勧めです。
私が過去のブログで、まず一人起業や小規模事業所なら、人に渡したい仕事からマニュアル作成することをお勧めしています。
けれども、そんなのんびりかまえていられなくて、いますぐチームのマニュアル作成を始めたいよという場合は、揉め事が起こりますなので、もめ事が起こっているところからまず事務作業のマニュアル化をやっていきましょう。
この掃除の事例のクライアントさんでも、すぐにマニュアル作成が幹部のなかで決まり、朝礼で伝えてゆくことを決められました。
優先すべきことを間違えない
間違っていただきたくないのは、「よし、そこは、経営者のわたしが率先して掃除の姿を見せなくてはならない」と考え、マニュアル作成ではなく、自分が掃除の時間を確保することを最優先させることです。
経営トップが掃除をする姿は、現場の士気を高揚させるためによく利用されますし、効果もあります。
しかし、「経営者の自分が掃除をすることが一番大事」なのではなく、一番大事なのは、業務の基準を示すマニュアル作成が先です。
そのうえで、一緒に作業を行うようにしてください。
経営者が、掃除を率先して行うということだけに逃げ込まないようにしてください。
目指す姿
目指す姿は、その作業を行なっていれば、みんな気持ちよく仕事ができ、職場環境が良くなり、スタッフ定着率が良いというところです。
恥ずかしい話しですが、わたしの美容室でも、昔、やっぱり掃除のことが原因で揉め、人が辞めた人が過去いらっしゃりました。
そのときは、タダ「掃除してくださいね」としか言わなかったです。
でも、そこがダメでした。
「拭く場所、頻度、タイミング、拭きあげる度」について、認識がバラバラだったために、結局、負荷がかかったスタッフが根をあげてしまいました。
いいスタッフほど、そうやって、根をあげて、辞めていってしまうのは、経営者の私が仕組み化の大切さに気づいていなかったからです。
仕組み化は、マニュアル作成でスタッフを縛るのではなく、スタッフが気持ちよくストレスなく業務を遂行できるように守るものであるとも、いまでは認識しています。
<昔の伝達>
- 使ったら都度掃除してください
<仕組み化後>
【シャンプー台】
- 利用した後、シャンプー台の床の水滴を拭きとる
- 利用した後、シャンプー台のボールのなかの水滴を拭きとる
- 利用した後、シャンプー台のネック部分の水滴を拭きとる
- 利用した後、シャンプー台まわりに、タオル、イヤーキャップを放置していないか確認する。
【トイレ】
- お客様がご利用になったあと、トイレットペーパーが切れているときは補充する
- お客様がご利用になったあと、便器のなかの汚物がある場合は洗い流す
- お客様がご利用になったあと、汚物入れに汚物がある場合はとりのぞく
- お客様がご利用になったあと、トイレの床や便器まわりが濡れている場合は拭き掃除をする
- お客様がご利用になったあと、洗面台の周りが濡れている場合はふき取る
クエストを楽しもう
仕組み化は、一度、マニュアル作成してしまえば、もうあとは手放しで万歳か?
はい、といいたいところです。
でも結局、何回か、しばらく運用していても、やっぱりこっちの方法の方がもっといいということがでてきます。
あるいは、このチェックリストにはこれが漏れていたということもどうしても起こります。
そんなときは、潔く、どんどんとチェックリストを改定していきましょう。
一度つくったから、次の改定は、1年後です、とか言わずに、いいことは、どんどんやっていける環境にしましょう。
えー!すぐには楽にならないの?
はい、仕組み化してすぐに、ハッピーが訪れるというわけではありません。
マニュアルの改定が何度も起こります。
これではもう少しこうしたいという下からの突き上げも必ずあります。
でも、ひとつひとつそれを皆でこえてゆく過程に行くなかで、みんなにとって心地良いところや、お客さまとともに向かってゆく途中にいるんだという姿を、常に掲げてすすんでいただくといいです。
一つ解決していくごとに、一歩ずつ理想のビジョンに近づくのだというマインドを、チームで共有しましょう。
ゲームのなかで、一つ一つ小さなクエストをこなしていくのと同じです。
マニュアルづくりは、ビジョンに近づく大切で欠かせないアイテムのひとつです。
そのために、もめ事がおこったときは、もみ消さず、クエストのように楽しんでいきましょう。
喧嘩仲裁で終わらせず、経営者のあなたがマニュアルを作り、根本解決とスタッフ定着化へ一歩踏み出しましょう。
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