小さな企業のDX化とは?何ができる?,というのが今日の記事のテーマです。
3店舗所有している美容業経営者様から質問をいただきました。「美容業でDX化とは、何があるのですか? 」
そう、美容業や治療院など、時間と労力をかけて人的サービスを提供する、地域密着の店舗事業では、デジタル化できるところなんて、ないのでは?というお返事がかえってくることも多いです。
中小企業専門のデジタルマーケティング運営導入支援の専門家として、和田がいつもお応えしていることを、記事にしてみました。
目次
1、デジタルに任せることで生まれるいいこととは?
「地域密着で、うちみたいに小さな企業は、デジタル化なんて関係ない」と感じる方も少なくありません。
しかし、実際には日々の業務やお客様対応の中に、デジタル化できるポイントが多く存在します。
いままで、あなたやもしくはスタッフさんの手をつかってやっていることを、デジタルに任せることで、サービスが冷たくなるわけでも、スタッフの仕事がなくなるわけでもありません。
あなたのお店にとって生まれるメリットは、2つあります。
ひとつは、お店でのバックオフィスの仕事が減ると想定されることです。
お店でのバックオフィスの仕事が減ると、何がいいのか?
機械にできなくて、あなたにしかできない、サービスの提供に、より集中して時間も脳内の思考も使うことができます。
より多くの時間を顧客にだけに向けることができたら、顧客満足度は、それに応じてあがることは容易に想像できるでしょう。
あなたが、3店舗運営していて、すでにたくさんのスタッフさんを抱えていて、「自分の仕事は、みな、スタッフにまかせている。バックオフィスの仕事も、スタッフが、それぞれ担当してやってくれているから問題ない」とおっしゃるかもしれません。
でも、考え直してみてください。スタッフさん一人一人が、それぞれ、顧客対応の時間を増やせるとしたら、あと何人プラスして接客対応人数が増えますか? しかも、その接客対応時間のサービス提供具合をよりうまく使いこなしてもらえたら、顧客の満足度もより向上することは容易に想像できます。
つまり、スタッフさんひとりひとりの、バックオフィスの時間を減らすことも、ひいては、あなたの会社全体の利益向上につながるわけです。
2、どんなバックオフィスの仕事が減るか
業務の一部をデジタル化して得られる、業務効率化は、どこから得られるか、みてみましょう。
仕事が減るのは、主に次の5つバックオフィスの仕事です。
・予約管理のデジタル化
オンライン予約システムを導入することで、24時間いつでも予約受付が可能になり、予約が増え、電話対応のときに施術の手を止めなければならないという手間や、予約ミスを削減できます。
・顧客情報・カルテの電子化
電子カルテを使って情報保管することで、施術履歴や好み、過去の会話内容を都度紙にメモしておくだけと比べて、あとから「すぐ」に検索して確認することもできますし、またスタッフが急な交代やあなたの代役をお願いしなければならないときでも同じ情報を共有することができます。また、大量の顧客カルテの紙の保管スペースも不要になったり、個人情報を管理するための、取扱マニュアルの簡素化、鍵つきキャビネットの購入コストも不要になります。
・顧客への情報発信の自動化
これまでは、電話をかけたり、ハガキ・手紙を書いて送ったりして、顧客のリピート化を促したり、VIP顧客をもてなしたりしてました。それを、LINEやメール、SNSを活用することで、キャンペーンや空き状況のお知らせを自動で配信でき、新規集客にも、リピーター獲得にも、VIPへのよりきめ細やかな対応につながります。
・売上・在庫管理のデジタル化
もし、店舗にて商品販売をされているなら、在庫管理、会計管理をしているはずです。この作業を、POSレジや在庫管理システムを導入すれば、売上分析や在庫状況の把握がリアルタイムで可能になり、毎日や、毎月の面倒な経理の占め作業が、楽になるだけでなく、仕入れ続けるかどうかとか、サイクルを早めるにはどうしたらいいかといった、経営者としての判断をよりスピーディーに行えるようになります。
・データ分析によるサービス改善
顧客売り上げのデータを分析しようとすると、まず、顧客データをエクセル等に入力して、グラフ化したり、分類したりなど、分析のための仕分けの手間が必要でした。でも、顧客データや売上データを分析することで、人気メニューや来店傾向を把握し、次のマーケティング施策をどうするか、お店のサービス向上に何を追加すべきか、とか、季節キャンペーンで次はどうしたらいいかとkった、最適化を図るための判断がスピーディーに下せます。
3、デジタル化で生まれるもうひとつのメリット
人的労力を提供するサービス業だからこそ、本業のようには感じないバックオフィスの仕事をデジタルに手伝ってもらって減らして、本業とおもえる「顧客と接する時間」の濃度を濃くするのが、デジタル化のメリットと上記でお伝えしてきました。
デジタル化から生まれる顧客満足度は、それだけではなく、次のプラスαの部分も大きく働きます。
デジタルで「顧客との関係性を強化」でき、リピート化、ファン化に強く働きかけることができるというメリットです。
顧客満足のメリットは4つあります。
・顧客つ常につながることで、つながりを強くする
オンラインチャットやSNS、メールなどのデジタルツールを活用することで、顧客との接点が増え、リアルタイムかつ多様なコミュニケーションが可能になります。これにより、ただ、顧客からのアクセスの利便性が増えるとか、いつもあなたとつながっていると思ってもらえるだけでなく、あなたも、こういった関係からうける恩恵があります。それは、サービス提供側として、顧客のニーズや要望を把握しやすくなるというメリットです。施術後のフィードバックや、ちょっとした次の要望を汲み取りやすくなり、次回のよりきめ細やかな対応につながります。
・個人の好みにあわせたサービスの提供ができる
店舗内におけるパーソナライズ対応は、美容業や施術院ではあたりまえのことです。それにくわえ、デジタル化の導入により、顧客データの蓄積と分析ができれば、一人ひとりの施術履歴や、嗜好、購買履歴に合わせた情報発信や提案ができるようになります。たとえば、「吸い玉治療」を以前受けているひと限定に、ホームケアキットの限定販売キャンペーンを提案することによって、家でもケアを継続してもらえて、より快適に過ごしてもらうことができるようになれば、、顧客満足度も、ファン度も向上することが期待できます。
デジタルは、一斉配信するのではなく、パーソナライズ化できることが、大きなメリットなんです。
・利便性による顧客満足度の向上
デジタル化により、問い合わせがすぐできる、予約が24時間できるなどの対応を迅速かつ正確にしてもらえるようになり、顧客にとって利便性が大きく向上することは大きなメリットです。単純なことのようですが、これが結果的に顧客満足度の向上につながります。わたしも、父のお供で理髪店についていっていたことがあるのですが、そのお店は、飛び込みOKのお店で基本は予約をとられないところだったためか、予約電話がなると、都度、理容師さんが施術の手をとめて電話をとりメモして、そして「すみません」といって、施術に戻っておられました。施術中だったお客様も、待たされるのを、不快感と感じるひとは、お店から離れていってしまうというデメリットがありますよね。
・顧客ニーズの可視化と先回り対応ができることによる顧客満足度
購買履歴や問い合わせ内容、行動データをPOS分析することがきでたら、顧客の潜在的なニーズや課題を把握しやすくなります。ひいては、顧客が求める前に最適な提案やサポートを行うことができ、より深い信頼関係の構築が可能です。これは、お店のバックオフィスの仕事の効率化と重なる部分です。バックオフィスの仕事を短時間にかつより有効に行うことで、顧客との信頼関係をより強化できるということです。
このように、店舗業務のデジタル化は顧客との関係性を「より密接に、よりパーソナルに、より効率的に」進化させ、長期的な信頼と満足を生み出すきっかけになります。
ここまでお話ししても、まだ、「それは若い人がくるお店ならそうかもしれないけど」という反論がまだ返ってくるときがあります。
4、顧客がシニア層だからデジタル化はできない?――本当にデジタル化は無意味なのか?
「うちのお客様は高齢者が多くて、スマホやパソコンは苦手。だからデジタル化しても意味がない」
というのも、現場でよく聞く声です。しかし、実はシニア世代向けのデジタルサービスは年々拡大しており、使いやすさやサポート体制も進化しています。
シニア層でもネットやスマホ利用は年々増加しています。50代はネット予約利用が半数近く、60代でも3割がネット予約を利用しているというデータもあります。
シニアを対象としてデジタルを活用したサービス提供は「選択肢を増やす」ことが大切な視点です。従来の電話や対面サービスを辞めてしまうわけではありません。併用がスタートです。シニア顧客のペースに合わせて少しずつ導入することで、より安心して利用してもらいやすくなります。
以前、こんな店舗オーナー様がおられました。
「顧客が使えないから使わないのではなく、顧客に美容と健康を提供するのが使命のうちだから、うちがイニシアティブをとって、デジタルをあなたも使えるようになれますよという安心を与えてさしあげるのも、人生を楽しくするひとつのアイテム提案をする使命だとおもったの」
と。そう、あなたは、伝道師なのですから、あなたの気持ち次第なのです。
だから、店舗経営者のあなたが「シニア顧客はデジタルが使えない」と、勝手に決めつけてしまわずに、まずは簡単なサービスから、スタッフやご家族のサポートを活用して一緒に始めてみる――それだけでも、顧客の新しい体験や安心につながる可能性があります。
デジタル化は、全員がスマホを使いこなすことがゴールではありません。
「必要な人に、必要な形で、少しずつ」導入することで、店舗と顧客双方の利便性や安全性を高めていけるのです。
シニア顧客向けデジタル化サービスの例を、ご紹介しておきましょう。
・電子書籍やデジタル雑誌の導入
待ち時間にタブレットで大きな文字の電子書籍や雑誌を読めるサービスは、シニア層にも好評です。紙の雑誌よりも清潔で、ページ送りも簡単で、かつ、文字を大きくしたり、明るく見えやすく画面上でできるため、視力や手先の不安がある方にも配慮できます。
・ネット予約や予約ができるようにするサポート
50代・60代でもネット予約を活用している方が増えています。電話予約と並行して、ネット予約やLINE予約の使い方をスタッフが丁寧にサポートすることで、デジタルに不慣れな方でも少しずつ利用できるようになります。デジタルでの予約システムを導入するときに、「入力の回数」「画面遷移の数」を極力すくなくすることを考えて選んでみてください。みんなといっていいほど多くの人がつかっているLINEをつかって予約していただくことを、シニアのお客様が必ずしも喜ばれないのは、「やりとりの手間」が必ず発生するからです。専用の予約システムでしたら、一度来店したお客様のスマホにお店側で必要な設定をすべてさせてもらっておいて、利用の方法を案内することで、オンライン予約に感じられる心理的ハードルをぐんと減らしていただけます。
このようなサービスを取り入れることで、シニア顧客の利便性や満足度を高めると同時に、店舗側の業務効率化や差別化にもつながります。
ちなみに、業務の効率化は、対シニア顧客であろうが、スマホを使われない顧客であろうが、関係なく進められますよ。ここは、メリットを切り分けてかんがえてみてくださいね。
シニア顧客が多いというのを、店舗のDX化にとりくまないいいわけとしては、半分にもみたないということになります。
5、デジタル化の投資にまわす利益がない、お金がないという声
それでもね、というデジタル化にふみきれない経営者様の声がまだあります。
「イニシャルコストもランニングコストも増える。今の利益ではとても投資できない」
これも現場でよく耳にする切実なお悩みです。
こんなときは、視点を、ちょっと上にあげてみてください。
デジタル化は、いまの支出にポイントがあるのではなく、未来の利益創出、未来のコスト最適化がキモなんです。
たとえば、いまある紙の管理や手作業の事務処理をデジタル化することで、未来にかかる印刷費・保管費・人件費が削減でき、スタッフが本来注力すべきサービスに永続的に時間を使えるようになります。
また、オンライン予約や電子カルテの導入で、未来の予約ミスやダブルブッキングが減り、将来にわたって顧客満足度やリピート率が向上することで、長期的な売上アップにつながります。予約システムと電話予約の両方の併用によるダブルブッキングの心配をされる声は必ずあがりますが、運用方法でそれを避けることは十分可能です。杞憂にしかすぎませんから、未来のメリットを信じて、安心してデジタルを導入いただけます。
初期投資が気になる場合は、無料や低コストで始められるサービスからスモールスタートし、効果を見ながら段階的に拡大する方法も有効です。
「今のまま」では現状維持が精一杯になります。
でも、未来を動かしたいと思うなら、デジタル化で、より“少しの投資で大きな効率化”を実現し、未来の利益を生み出すための一歩を、いま踏み出してみませんか?
6、最初の一歩は、なにを任せたいか、まずチェックリストから考えてみよう
「何から始めればいいかわからない」「うちの店舗に合うデジタル化って何?」――そんな方のために、まずは現状を整理し、最初の一歩を見つけるためのチェックリストを用意しました。
該当するものにチェックを入れてみてください。多く当てはまる項目が、あなたの店舗にとって“今すぐ始めやすいデジタル化ポイント”です。
□ 予約やキャンセルの電話対応が多く、業務が煩雑になっている
→ オンライン予約やLINE予約の導入を検討
□ 紙のカルテや顧客管理ノートが増え、探すのに時間がかかる
→ 電子カルテ・顧客管理アプリの導入を検討
□ お客様へのお知らせやキャンペーン案内を手作業で行っている
→ LINE公式アカウントやメール配信ツールで自動化
□ 店舗の混雑状況や施術メニューを、もっと分かりやすく伝えたい
→ 店舗内デジタルサイネージやホームページの活用
□ 施術後の写真やアドバイスを、紙や口頭でしか渡していない
→ スマホやLINEで写真・アドバイスを送るサービスの導入
□ 売上や在庫の集計・管理が手作業でミスが起こりやすい
→ POSレジや在庫管理アプリの導入
□ シニアのお客様も多いが、スマホやネット利用者も増えてきた
→ シニア向けにタブレットや大きな文字の案内、ネット予約サポートを検討
□ SNSや口コミサイトでの情報発信がほとんどできていない
→ まずはInstagramやGoogleビジネスプロフィールの登録・更新から
最初の一歩におすすめのデジタル化
・予約管理のデジタル化(オンライン予約)
・顧客への情報発信の自動化(LINE公式アカウント、メール配信)
・電子カルテ・顧客管理アプリの導入
・店舗内でのデジタル書籍やでデジタルサイネージ活用
チェックが多かった項目から、まずは一つだけ取り組んでみましょう。
あなたのお店に合ったスモールスタートで、未来の変化を楽しんでください。
もし、それでも、だれかにデジタル化のことを相談したいとおもったら、中小企業診断士で、美容室店舗のこともよく知っていて、デジタルマーケティングのコンサルティングも行っている、和田にまずご相談ください。
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